青いバス停

There have been buses for more than 90 years in Otsu City. 「専攻?」である大津営業所管内の京阪バスの歴史を主体とした交通関係の記事をはじめ、雑記を記しております。
蹴上を語るのに、「インクライン」は決して外せません。

最近、観光船を通すという計画で、俄(にわ)かに脚光を浴びている琵琶湖疏水ですが、インクラインは、疏水の中でも標高差が大きい、蹴上船溜まりと南禅寺船溜まり(南禅寺前交差点・琵琶湖疏水記念館前)までの間を、船で通過できるようにするために設けられた傾斜鉄道です。

1891(明治24)年から1953(昭和28)年まで使われて、廃止されたのちも長く線路が残っていましたが、1973(昭和48)年に一旦撤去されます。現在ある線路や台車は1977(昭和52)年に、産業遺産として復元されたものです↓

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↓いつの頃からか、舟の上には日本酒の樽や米俵、炭俵が載っています。

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↓こんなところで盗られたりしないのかな?と真面目に心配しましたが、京都滋賀県人会が作ったダミーだそうです。

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↓その脇にあるこれは、京都市電がここまで通じていた時の架線柱の基礎なのだそうです。

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行楽シーズンならともかく、オフシーズンの平日日中に、こんなところが終点になっていても、「引き上げ線」状態で利用者などほとんどいなかったのではないかと思います。
1945(昭和20)年2月1日、太平洋戦争の激化によって全線休止となり、その20年余り後、1965(昭和40)年7月10日に廃止されたということです。恐らく廃止は書類上の手続きだけで、実際には線路は撤去されていたのではないかと思われます。1961(昭和36)年の航空写真を見ても、解像度が低くて分かりにくいのですが、市電の軌道らしきものは確認できません。

京津線と直通していると、また運命が違ったかもしれません。

昨年(2015年)1月6日放送のNHK『ブラタモリ』で、ここが取り上げられたのをご記憶の方も多いのではないでしょうか。

その時、琵琶湖疏水記念館の学芸員の方の話で私も気づいたのですが、上りの方は歩きやすいように石畳が敷かれていて、反対側はそれがありません↓

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石畳のある方が「通路」で、ない方は本来「線路の展示場」なのだそうです。

↓これもまた『ブラタモリ』で取り上げられていた、1887年製のレール。イギリスのBarrow社製だそうです。

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京都市上下水道局の公式サイト内所蔵品紹介:蹴上インクラインのレールによると、恐らく日本最古の75ポンドレールと考えられているということです。
メーカーや製造年代を特定できるレールはこの他に53本あるということです。日本の八幡製鉄所はじめ、英米仏独の各国製が確認されているそうです。
大雨や大雪を数え切れないほど経験したら、文字が見えなくなるどころか、レール自体完全に錆び切って、ボロボロになってしまうのではないかと思いますが、100年をゆうに超えてなお、歴史を伝え続けています。

↓そして、これがやはり『ブラタモリ』でも放送された、「犬釘」と「亀釘」です。

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普通「亀釘」などということばは使いません。線路を枕木に固定するのは、「犬釘」です。上の写真左側の釘は、正に「犬釘」ですが、右側は寧ろカメの形に似ています。犬の形に似ているのがイギリス製で、カメの形に似ているのがアメリカ製です。

日本で「鉄道」を英語にする場合、アメリカ式のrailroadではなく、敢えてイギリス式のrailwayと訳すことが多いことからも分かるように、日本の鉄道技術はまずイギリスから取り入れられたため、犬の形をしたイギリス製の方が先に日本に入ってきたようです。しかし、結局後の時代にはカメの形の方が普及してしまったので、名前だけイギリス風が残ってしまったということのようです。

タイミングがちょっとずれて、「亀釘」が日本に先に入ってきていたら、「亀釘」という日本語が生まれていたかもしれません。
(なお、ネットでコーテーションをつけて「犬釘」「亀釘」を検索すると、亀釘は犬釘の100分の1くらいしかヒットしませんでした)

↓カメ

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↓犬

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↓このレールの下をくぐるのは、これも忘れてはならない「ねじりまんぽ」

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「まんぽ」は漢字では「間歩」で、トンネルの別名です。鉱山の坑道を指す場合は「まぶ」と読むこともあるようです。

現在は蹴上駅・蹴上バス停と南禅寺・永観堂や、東山中学・高校との間の歩行者用の近道になっています。

↓なぜ「ねじり」なのかは、中を見れば一目瞭然

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レンガが渦を巻くように積まれています。すごい技術だと思います。

↓三条通側の扁額には、「雄観奇想」と書かれています。

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これは、第3代京都府知事で、遷都によって力を失った京都を立て直すべく、琵琶湖疏水を計画した立役者である北垣国道(きたがきくにみち 1836-1916)の揮毫です。

このことばの出典はよく分からないようですが、「素晴らしい景色と考え」というような意味合いだそうです。

一方、南禅寺側の扁額は、「陽気発処」と書かれていますが、こちらは残念ながら文字が薄くなってしまっていて、後で調べ直して何が書かれているのか知ったような次第です↓

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出典は『朱子語類』といって、朱子のことばをまとめた本にでてくる「陽気発する処(ところ)、金石亦(また)透る、精神一到、何事かなさざらん。」ということばに拠るようです。
つまり、強く願い、念じれば、金や石さえも通るように、その思いが叶う、ということのようです。

琵琶湖から京都へ水路を通すなんて、今の土木技術でも大変なことでしょうに、この当時は夢のようなことに思われたでしょう。あまりむやみに「やればできる」とか言うのは好きではないのですが、でも、念じる、精神を集中する、ということが時に、人間に思いもよらぬ力を与えることはあり得ることだろうと思います。

ここから坂を上に登っていくと、蹴上船溜まりがあるのですが、長くなりましたので、続きは次回にさせて頂きます。
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