青いバス停

There have been buses for more than 90 years in Otsu City. 「専攻?」である大津営業所管内の京阪バスの歴史を主体とした交通関係の記事をはじめ、雑記を記しております。

「あなたの星、とてもきれいですね。海がありますか、ここには?」
「知らんよ、そんなこと」と、地理学者はいいました。
(中略)
「だって、おじさんは、地理学者でしょう?」
「そりゃそうだ。だが、わしは探検家じゃない。探検家なんか、わしにはまったく御縁がないよ。地理学者は、町や川や、山や海や、大きな海や、砂漠のかんじょうなんか、しようとはせん。とてもたいせつな仕事してるんだから、そこらをぶらついてなんかおられんのだ。仕事べやに、ずっとひっこんでるきりだよ。だが、探検家がきたら、いろいろな報告をうけて、あいての話をノートにとる。そして、あいての話をおもしろいと思ったら、地理学者というものは、その探検家がしっかりした人間かどうか、しらべさせるのだ」
「どうして?」
「もし、探検家がうそをついたら、地理の本が、トンチンカンにならんとも限らんからね」

サン・テグジュペリ 内藤濯訳『星の王子さま』 84-85 岩波書店 1953




星の王子さま (岩波少年文庫 (001))星の王子さま (岩波少年文庫 (001))
(2000/06/16)
サン=テグジュペリ

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湖西線の車窓から見えるその団地を、乗客は、「琵琶湖が見えていいところだろうな」と漠然と思うことでしょう。

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何だか、岡鹿之助の「段丘」の絵みたい…。

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しかし、一歩団地に入ると、何か違和感を覚えることでしょう。
ふと角を曲がると、傷んだ下り坂↓

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なおも行くと、更に傷んでいるところが↓

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うわ!車で通ったら、タイヤが空回りしそう↓

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皆さんは、「地図混乱問題」をご存知でしょうか?私は不勉強で、そんなことがあるとは全く知りませんでした。ひょんなことから、大津市内(旧志賀町)に、「地図混乱地域」の典型例として有名な場所があることを知り、京阪バス・京都今津線廃線跡を辿る際に立ち寄ることにしました。

京都今津線そのものについては、北から順番に書いていく予定ですが、こちらは番外編として別立てで取り上げます。

ここは大津市和邇北浜の、「住吉台団地」。昭和40年代に開発が始まったそうです。



『志賀町史 第三巻』(志賀町史編集委員会 2002)には、次のように書かれています。

住吉台は、独立した自治会となる以前は北浜区に属していた。独立後、北住吉区とともに自治会を形成していたが、平成十年(1998)度より人口増加に伴い分離した。宅地開発は昭和四十五年(1970)より進み、当初は、別荘地として売り出されたが、現在は数社の宅地開発業者が宅地分譲を行っている。約五〇〇区画が造成されたが、登記簿上の地番と宅地の地番が異なる地図混乱地域になっている。土地問題特別委員会を自治会内に作り、街づくりニュースの発行、基準点からの測量の見直し、マスコミの地図混乱地域取材の対応、専門家との協力体制確立、道路土地問題基金の取り組みなどを行っている。また、住宅地内の道が私道になっているため、自治会を中心に道路側溝修理工事ほか道路の漏水・陥没などに対応している。
(415-416)



工事をしようにも、権利関係がはっきりせず、行政も、誰に断りを入れてよいのか分からないため、放っておかれて、先の写真の通り、傷み放題、ということのようです。大津市内ではもはやほとんどない、下水道未整備地域で、生活排水は「浸透枡」で地下に放水しているため、余計に地盤の状態を悪くし、更に道が破損する、という悪循環となるようです。

↓再び街を歩きます。何だか何十年も前にタイムスリップしたような気にさせられます。

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↓南隣、和邇(わに)駅寄りの「高城台(たかしろだい)」と比べれば、その違いは一目瞭然です。

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↓道路だけ見ると捨てられた街のようにすら見えてきますが、周囲の家はきちんと整備されているので、余計に不思議な光景です。逆に言うと、私たちが暮らす街も、ちゃんと手を入れないとすぐに傷んでしまう、ということです。工事による片側通行にイライラすることもありますし、特に年度末なんて、本当に必要な工事なのか?なんて思ったりしますが、工事をしてもらえるだけありがたいとも考えられます。

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↓……? どうも側溝が壊れているようです。

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↓ところどころにこういう、住吉台地番整理協議会の方が作られたと思われる札があるので、上のような場所も、修理されるとこのように札が立つのかもしれません。

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↓117系が、街のへりを通り過ぎていきます。

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↓さすがに大津市のごみ収集はあるようです。

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あと、都市ガスが来ていないので、どこでも必ずプロパンガスなのが印象的でした。道路が工事できないのに、どう整備したのか分かりませんが、さすがに電気と上水道はあります。


なぜこんなことになってしまったのかなど、詳細については、先ほどの住吉台地番整理協議会の公式HPが詳しいのですが、要するに、高度経済成長期の大量の登記申請を、大津地方法務局が実態調査を省いて受理したため、二重登記や、実際にはない土地に地番が割り振られる、などということが起きてしまった、ということのようです。

登記が混乱しているため、以前は、ある日突然「ここはあなたの土地ではありません」などといって、道路が封鎖されるなんていうこともあったようです。

↓街の入口にある、由緒のありそうな住吉神社

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平安の頃、花山天皇の皇子、清仁親王(きよひとしんのう)が、琵琶湖で時化に遭い、この辺りの漁師に助けられた縁で構えたということです。

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神社の長い歴史から見れば、地図混乱問題はほんの昨日一昨日の話で、神様も驚いていることでしょう。本殿で、問題が無事に、早く解決することを祈って、住吉台を後にしました。

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地図混乱地域は全国に750カ所もあるそうで、ついこないだまで問題を知らなかった私が言うのも何ですが、決して他人事ではありません。 大阪など都市部は特に多いそうです。

編集に当たっては、住吉台地番整理協議会の谷川柾義会長に、同協議会の公式HPへのリンクや、現状の説明などでご協力頂きました。末筆になりましたが、厚くお礼申しあげますとともに、小さなブログで微力ですが、1人でも多くの方に、こうした問題の存在を知って頂き、国民の関心が高まり、住吉台をはじめとする各地の地図混乱問題の解決の一助となれば幸甚です。

なお、地域の方は生活されていますから、興味本位で安易に大人数で押し掛けたり、自動車を付近に不法駐車したりしてご迷惑を掛けるようなことのないようにして下さい。
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コメント
この記事へのコメント
こういう事もあるんですねぇ。
「地図混乱地域は全国に750カ所もあるそうで」。。
750箇所のひとつが大津市内にあるというのも驚きです。
住宅開発が急激に進んだ時代にはこういう事が起こったのですね。
なんでも当然のように思っていますが、ひとつ違えば町の風景も変わる。。それぞれのおかげで、今があるという事なんだと思います。

 父が「これみよがしに」←親不孝な娘にはこう見えていたのです(汗) 公園の草ひきをしていましたが、父亡き後の夏の公園は無残な姿です。 草ひきをしないと公園はこんなに荒れるんだなぁと。。今更きづきました。

 人が住まない家はたちまち、カビがはえ、シミができてきます。。

 日々のお手入れ。。いえ。。気持ち入れ。。これは大切な事ですね。
2011/08/22(月) 18:04:46 | yume | #/eG2YYas[ 編集]
No title
750ということは、1都道府県当たり約16カ所という計算ですが、宅地開発が盛んで人口が密集している都市部に多い傾向があるようです。解決したケースを別にすると、現在先駆的な取り組みを行っていて、全国的に最も有名なケースの1つが住吉台であるようです。
そもそも丸い地球、起伏のある土地に、線を引っ張って、どこからどこまでがあなたの土地…なんていうことを考えること自体、大変なことですね。
2011/08/22(月) 22:55:20 | 喜撰猿丸 | #HdXTMQ3I[ 編集]
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